ナラティブとは、物語を指します。キャリアの世界でもナラティブアプローチが存在します。このアプローチでは、相談者が自身の物語(ストーリー)を通じて「意味の確認」と「生き方の再著述」を行うことで支援されます。
具体的な手法としては、年代ごとに印象に残っている出来事のキーワードを書き込み、自分の人生にタイトルをつけるワークや、好きな雑誌やテレビ番組、ウェブサイト、座右の銘、好きな本や映画などについてセルフインタビューし、なぜそれが好きなのかを考えるワークがあります。そして、キャリアコンサルタントとの面談を通じて、これらの結果を活用しながら適切なキャリアの選択や未来の考え方を探求します。
私自身も先日このセミナーを受講しました。このアプローチでは、過去を振り返るだけでなく、現在につながる思考などに気づき、未来を考えることができます。しかし、ナラティブアプローチを通じて見えてくるものには親の呪縛が存在していることもあります。
例えば、以下のような親の呪縛が考えられます
・「〇~してはダメ」「~は間違えている」と言われ続けた。
・親に褒めてもらった記憶がない。
・何が正しいか親が決めていた。
・親の言うことが絶対だった。
これらは児童虐待やネグレストではなく、普通の親子関係の中に存在する精神的な支配や束縛です。このような状況では、自己決定や自律が難しくなり、個々のニーズを抑えられてしまうことがあります。
しかし、親にとらわれていたとしても、その事実に気づいた時点で行動を変容させることができます。現在の状況に基づいて過去を解釈し、自身のニーズに合うように過去のストーリーを再構築することができるのです。
また、読者の中に親の立場にある方がいらっしゃるかもしれません。その場合、自身が子どものために行動すると言いながらも、子どもの思考や意見を奪っていないか振り返ってみてください。子どもが親の言うことを聞いていれば必ず正しいという考え方や、善悪の判断を一方的に決めつけていないか、そして十分な話し合いの時間を確保しているかを考えてみてください。
私たちは、このようなケースで悩んでいる人を多く見ています
このコラムが、そうした人々にとって気づくきっかけとなり、自身の状況を見つめ直し、変容する一歩を踏み出す助けとなれば嬉しいです。親子関係や家族の中での自己決定やコミュニケーションの重要性を考えるきっかけとなり、より健康的な関係を築く手助けになれば幸いです。